ゾートロープ(回転のぞき絵)回すと絵が動き出す、スリット越しの19世紀アニメ装置
ゾートロープは、内側に連続画のストリップを入れた円筒をくるくる回し、外側のスリット越しにのぞくと絵が動いて見える装置。日本語では「回転のぞき絵」。映画が生まれる半世紀以上前に、家庭の居間でアニメーションを見せていた玩具で、名前はギリシャ語の「生命の輪」に由来する。
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楽天 参考価格 ¥240〜 税込・工作キット。店舗により変動
写真: Clem Rutter, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(リーズ産業博物館=英国の展示品。木馬の騎手のストリップ入り)
基本スペック
特徴
- スリットの入った円筒の内側に、連続画を描いた紙のストリップを差し込んで回す。スリット越しにのぞくと絵が動いて見える
- スリットが高速のシャッターの役目を果たし、コマ送りの絵が残像でつながる。映画やアニメと同じ原理
- 先行のフェナキストスコープ(回転円盤)は鏡が必要で1人用だったが、ゾートロープは鏡なしで、複数人が同時にのぞける
- ストリップは差し替え式。本体を1台買えば絵を交換して遊べる「ソフト交換式」の玩具だった
- 現代は立体ゾートロープ(ジブリ美術館・ピクサー)に進化し、工作キットは自由研究の定番になっている
誕生と歴史
4月23日
この装置は、名前を変えたら売れた玩具でもある。1834年のホーナー版「デダリウム」はギリシャ神話の名工ダイダロス由来の学者らしい命名だったが、装置ごと30年あまり忘れられた。1867年、リンカーンが「ゾー(生命)+トロープ(回るもの)」=生命の輪と名づけ直してミルトン・ブラッドリーから売り出すと、こちらは大ヒット。「絵に命が宿る」という売り文句をそのまま名前にしたことになる。ちなみに特許書類の発明分類は、そっけなく「TOY.(玩具)」の一言だった。

図: W. E. Lincoln, Public domain, via Wikimedia Commons(1867年4月23日の米国特許64,117号。右下にストリップの図があり、分類名は「TOY.」)
ゾートロープの商売のうまさは、本体とストリップを分けたところにある。本体を1台買った家庭は、絵柄を替えたくなるたびに交換用ストリップを買い足す。ミルトン・ブラッドリーは番号付きのストリップシリーズを次々に発売した。本体(ハード)とソフトを分けて売る玩具ビジネスの、ずいぶん早い実例といえる。
2001年、三鷹の森ジブリ美術館の展示室「動きはじめの部屋」に、立体ゾートロープ「トトロぴょんぴょん」が置かれた。平面のストリップの代わりに少しずつポーズの違うトトロやメイのフィギュアを円盤に並べ、スリットの代わりにLEDのストロボ光で「コマ」を刻む方式。これを見たピクサーが触発されて『トイ・ストーリー』版の立体ゾートロープを作り、ニューヨーク近代美術館や各地のディズニーパークで展示された。190年前の玩具の原理が、そのまま現代の展示の花形になっている。
しくみ・遊び方
連続画を描いた紙のストリップを、円筒の内側の壁に沿わせてセットする。
円筒をくるくる回す。速さはお好みで、速いほど動きはなめらかになる。
外側から、壁のスリット越しに内側の絵をのぞく。スリットがシャッターの役目をして、一瞬ずつ見える絵が残像でつながり、動いて見える。
スリットを通さずに直接のぞいても、絵は流れてぼやけるだけで動いて見えない。「見えない時間」を作ることが、映像が動く条件になっている。

図: Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museum所蔵, Public domain, via Wikimedia Commons(1860年ごろのストリップ「ボールを取る犬」。これを円筒に入れて回す)
いろいろなゾートロープ
ヴィクトリア朝の量産品から現代の複製品・工作キットまで、原理はそのままに形を変えて生き続けている。
写真: Andrew Dunn, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
写真: Clem Rutter, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
メモ
- 日本語名は「回転のぞき絵」。国立科学博物館などで実物が展示されてきた。
- 紀元前1世紀の中国で、職人の丁緩(ていかん)が回る絵のランプを作ったという記述が4世紀の文献にあるが、アニメーションを意図したかは極めて不確かとされる。
- 先行のフェナキストスコープは、発明者プラトーが目を痛めるほど視覚研究に没頭した末の産物。こちらは円盤式で、鏡に映して1人でのぞく方式だった。
- 映画監督フランシス・フォード・コッポラの制作会社「アメリカン・ゾエトロープ」は、この装置から名前を取っている。
- 立体ゾートロープはスリットの代わりにストロボ光で「コマ」を刻む。原理は19世紀のまま、シャッターの方式だけが進化した。
購入先
19世紀の量産品は骨董市場でしか出会えないが、ゾートロープそのものは工作キットとして現役で、学校教材の定番になっている。数百円のキットで、190年前と同じ「絵が動き出す瞬間」を自分の手で作れる。夏休みの自由研究の題材としても人気がある。
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