たまごっち(初代)1日1万件の問い合わせを生んだ、タマゴ型育成ゲームの元祖

たまごっちは、1996年11月23日にバンダイが発売したタマゴ型の携帯育成ゲーム。ごはんをやり、うんちを片付け、看病して、画面の中の生き物を育てる。世話を怠れば死ぬ。発売1年足らずで1,000万個、初代シリーズだけで世界約4,000万個を売り、育成ゲームというジャンルを作った。2020年代には欧米で再ブームが起き、初代デザインの復刻もいまも現役で売られている。
スポンサーリンク
楽天 参考価格 ¥2,707〜 税込・初代復刻版(Original Tamagotchi)
写真: Tomasz Sienicki, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(初代期のたまごっち。タマゴ型ボディにボールチェーン、ボタンは3つ)
基本スペック
特徴
- タマゴ型の本体に白黒液晶とボタン3つ。タマゴから孵った生き物に、ごはん・掃除・看病の世話をして育てる
- 育て方しだいで成長する姿が分岐する。時計機能を内蔵し、生き物は現実の時間で生活する
- 世話を怠ると死ぬ。この仕様は社内で「刺激が強すぎる」と懸念されたが採用され、以後も変わっていない
- もとは腕時計型の企画。女子高生のスクールバッグ文化に合わせてキーチェーン型になった
- 初代デザインは「Original Tamagotchi」として復刻され、最新シリーズと並んで現役で売られている
誕生と歴史
6月
11月23日
2月
企画名は「たまごウォッチ」。原案は腕時計型で、ベルトを付ける予定だった。バンダイ側で企画書を受けた本郷武一によれば、採用は「売れるからというより、単純に面白いからやってみるか」という軽さだったという。腕時計案は、安価な電子部品で作るとかさばるため撤回。当時の女子高生の間で流行していた「スクールバッグにキーホルダーをたくさん付ける」文化に合わせて、ボールチェーンのキーチェーン型に落ち着いた。卵型にしたのは「卵型の玩具は売れる」という経験則から。企画から発売まで、ターゲットの女子高生へのリサーチを重ねた結果が、あの形になっている。
発案者・横井昭裕の原体験は海水魚の飼育で、「どんなに工夫をしても2週間くらいで死なせてしまい、生きものを育てる大変さを痛感した。大変だからこそ可愛さを感じる」——この実感が仕様の核になった。バンダイ社内からは「子どもには刺激が強すぎる」「行き過ぎでは」という懸念が出たが、横井は「どんなに会社に反対されても、命尽き果てる設定は譲らなかった」と語っている。ブーム崩壊後も、復活後の歴代機種でもこの設定は残されている。一方で「最期」の演出は国と時代で違う。初代の日本版では死ぬとお墓とおばけが表示されるが、欧米版ではUFOが現れて故郷の星へ帰っていく。天寿を全うした場合の日本版には、天に昇る「てんしっち」の演出があった。死をどう見せるかだけ、文化に合わせて作り分けられている。
1997年、店頭からたまごっちが消えた。入荷日には行列ができ、希少とされた白は1個9万円で取引され、色を塗り替えて希少色に見せかけた個体が18万円で売られた例まで報じられた。仕入れの半分だけ店頭に出し、残りを高値で裏売りする店の話も残る。通販詐欺、たまごっちにかこつけた恐喝、販売店を狙った盗難事件が全国で相次いだ。バンダイへの問い合わせは1日1万件を超え、同社は新聞に謝罪広告を出す。担当した本郷武一は「商品がここまで足りないという経験は初めて」だったと振り返る。授業中に世話をする子が続出して学校への持ち込み禁止が相次ぎ、「たまごっち」は新語・流行語大賞にノミネートされた。JALの塗装機が飛び、英国のペット霊園には専用墓地ができた。

写真: Yamaguchi Yoshiaki, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons(JALのたまごっち塗装機・2006年成田。塗装機は初代ブーム期から復活期まで繰り返し就航した)
品薄の穴を埋めるように、そっくりのバーチャルペットが大量に出回った。バンダイは1997年4月、模倣品を扱う8社に不正競争防止法に基づく仮処分を申し立てて認められ、同月28日には5社へ輸入・販売差止めと損害賠償の本訴を起こした。翌1998年の「ニュータマゴウォッチ事件」判決(東京地裁)は、玩具の形が商品の目印になり得るかを争った事例として知財の教科書に残っている。バンダイ公式サイトには、いまも「STOP!模倣品」のページがある。いっぽう恐竜を育てる「ぎゃおッPi」のような他社の類似ペットは、それ自体が90年代の空気を写す資料として、中古市場でいまも流通している。
中古品が楽天市場に現存(画像は販売ページより)
中古品が楽天市場に現存(画像は販売ページより)
訴訟をよそに、1997年の売り場は各社のバーチャルペットで埋まった。品薄の穴を埋める便乗品から大手の正規参入、映画ライセンス品まで、育てる対象別に棚ができるほどの物量だった。その多くは1年足らずで消え、現存する個体はこの時代を写す資料になっている。
- 恐竜系:ぎゃおッPi(前出)/ジュラペット(ツクダオリジナル・映画『ロスト・ワールド』タイアップ)/ゴジラッパー(名前はゴジラ風だが育つのは動物)/なき虫りゅう太くん(「世界恐竜博公認」を掲げた)
- 犬系:ばうっPi(ぎゃおッPiの犬版)/ペットごっち(犬小屋型で名前まで「ごっち」)/ガンバレ!!犬だくん(体重管理機能付き)/米国のNaNo PUPPY
- 猫系:ねこっちゃ(結婚がゴール)/ネコ生んじゃった(タカラ・2台を通信させると仔猫が生まれる繁殖機能)
- 米国の対抗馬:Giga Pets(タイガーエレクトロニクス・1997年5月発売・約10ドルとたまごっちより安く、『101匹わんちゃん』や『ロスト・ワールド』のライセンス版で息長く売った)/NaNo Pets(プレイメイツ・犬猫恐竜エイリアン)。1997年末にはセガ・カシオ・富士通なども参入した
- 本家の変化球:玉緒っち(バンダイ・1998・女優の中村玉緒を育てる。肩書は「ハイパーインタラクティブ・デジタルアクトレス」)
中古品が楽天市場に現存(画像は販売ページより)
中古品が楽天市場に現存(画像は販売ページより)
中古品が楽天市場に現存(画像は販売ページより)
品切れ対策の増産が裏目に出た。1998年にブームが冷めると売れ残りが積み上がり、約60億円の損失が報じられ、バンダイは赤字に転落した。以後の同社は「ブームの絶頂で増産しない」生産管理を徹底し、たまごっちのブームはおよそ8年周期で再来する、という分析を自ら語るようになる。実際、2004年の復活、2010年代のカラー機、2020年代の欧米再ブームと、波はくり返し来ている。
2020年代の主戦場は海外になった。Y2Kリバイバルの波で欧米の若い世代が初代型たまごっちを持ち歩き、欧米版は直近4年で約440万個を出荷(2022年報道)。2022年には欧米版デザインが日本へ「逆輸入」され、2023年のWi-Fi機「Tamagotchi Uni」は世界同時発売になった。2025年の「たまごっちパラダイス」でシリーズ累計出荷は1億個を超え、2026年に30周年を迎える。かつて女子高生のバッグに下がっていたタマゴは、いま世界のZ世代のバッグに下がっている。
遊び方
時計を合わせるとタマゴが画面に現れ、しばらくすると孵化する。ここから世話が始まる。
ごはんとおやつをやり、うんちを片付け、病気になったら看病する。電気を消して寝かしつけるのも仕事。
世話の質と量で成長する姿が分岐する。まじめに育てれば「まめっち」、怠ければ「おやじっち」。そして放置すれば死ぬ。
初代期の家族
- たまごっち(初代・1996):白から始まった最初のシリーズ。育つのは「まめっち」「おやじっち」など
- 新種発見!!たまごっち(1997):第2弾。育つキャラクターが一新され、品薄をさらに過熱させた
- てんしっちのたまごっち(1997):天使の世界を育てる派生機。「死」の先を描いた変わり種
- 海外版(Gen1/Gen2・1997):欧米・アジアへ展開。最期の演出がUFOに差し替えられた
- デジタルモンスター(1997):対戦機能を積んだ男の子向けの弟分。のちのデジモンシリーズの始まり
いろいろなたまごっち
初代の白から、スケルトンカラー、海外版、そして博物館の収蔵品まで。
写真: Museum Rotterdam, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(1997年製・タイ生産の黄色いスケルトン。オランダのロッテルダム博物館の収蔵品)
メモ
- 企画書の提出は1995年6月。発案者の横井昭裕は玩具企画会社ウィズの社長で、バンダイ側の担当が真板亜紀だった。
- 初代にも時計機能がある。腕時計型で企画が始まったなごりで、名前の「ウォッチ」もここから。
- イグノーベル賞の授賞式では、本物のノーベル賞受賞者が賞を手渡す。
- 機械やソフトに情緒的な愛着を抱く現象は、英語圏で「Tamagotchi effect(たまごっち効果)」と呼ばれる。玩具の名前が心理学の用語になった。
- 初代を担当した本郷武一は、2020年代の再ブームを「全く想像にもなかった」と語っている。
- 欧米再ブームの背景には、Y2Kリバイバルと「スマホでない小さなデジタル機器」への支持があるとされる。
- この図鑑のベイブレード(ヨーヨーのページ参照)と並ぶ平成玩具ブームの代表格。ブーム崩壊の在庫損失も両者に共通する教訓になっている。
購入先
初代のデザインとゲーム内容を受け継ぐ「Original Tamagotchi」が現行で手に入る。柄は多数、価格は3,000円前後。最新の「たまごっちパラダイス」と並べれば、30年ぶんの進化を見比べられる。世話を怠ると死ぬのは、今も昔も変わらない。
※本ページはアフィリエイトプログラムによるプロモーションを含みます。価格・在庫は変動する場合があります。
関連



















