かるた・百人一首

かるた・百人一首南蛮渡来の「carta」を、貝合わせの国が作り替えた450年の札遊び

18世紀の歌かるた(百人一首)

安土桃山〜現代札遊び南蛮渡来

かるたは、読み手が札を読み上げ、取り手が場に散った札を探して取る日本の札遊び。語源はポルトガル語の「carta(カード)」。16世紀後半に南蛮船が運んできたトランプが国内で作り替えられ、賭博の札、和歌の札、ことわざの札へと枝分かれした。配られた手札で駆け引きする世界のカードゲームに対し、「読む・聞く・探して取る」というかるたの構造は日本で生まれた形。いろはかるたも百人一首も花札も、たどれば同じ一枚のcartaに行き着く。

写真: Hiart, CC0, via Wikimedia Commons(滋野井公澄筆と伝わる18世紀の歌かるた・ホノルル美術館蔵)

基本スペック

語源
ポルトガル語「carta」(カード)
伝来
16世紀後半(南蛮貿易)
国産最古級
天正かるた(「三池住貞次」銘)
主な系統
いろはかるた/歌がるた(百人一首)/花札
競技化
1904年ルール統一・名人位は1955年創設
入手状態
現行(かるた専門店・玩具店)

特徴

  • 読み手が1人いて、残る全員が取り手になる。手札を配らず、場の札を奪い合う——世界のカードゲームの中でも珍しい「聞く」構造
  • 絵札と文字札、または読み札と取り札の二枚一組が基本。対を合わせる骨組みは、平安時代の貝覆い(貝合わせ)に通じるとされる
  • 中身は入れ替え自由。ことわざ(いろはかるた)、和歌(百人一首)、方言や郷土の名物(郷土かるた)まで、同じ骨組みで何でも運べる
  • 賭博の道具として禁令を受け続けた系統(天正かるた→花札)と、文芸・教育の遊びとして生き残った系統(歌がるた・いろはかるた)に早くから枝分かれした

誕生と歴史

平安時代
二枚貝の対を合わせる「貝覆い(貝合わせ)」が貴族の間で遊ばれる。のちに和歌を書き入れた歌貝も現れ、かるたの骨組みの一つになったとされる
16世紀後半
ポルトガル船がラテン式トランプ「carta」を日本に伝える
天正年間
(1573-92)
国産トランプ「天正かるた」が作られる。現存する最古級の札の裏には筑後・三池の工人「三池住貞次」の銘が残る(兵庫・滴翠美術館蔵)
江戸初期
幕府が賭博かるたを繰り返し禁じる。禁令を逃れるため、絵柄や枚数を変えた変形かるたが次々に生まれる
1681年頃
75枚に増やした「うんすんカルタ」の記録が現れる(天和期)
江戸前期
〜中期
百人一首の歌がるたが木版で量産され、宮中・武家の遊びから庶民の正月遊びへ広がる
江戸後期
ことわざの「いろはかるた」が上方で生まれ、江戸へ伝わったとされる
1889年
山内房治郎が京都で任天堂の前身となる店を創業。花札・かるたの製造から始まる
1904年
新聞『萬朝報』の黒岩涙香が競技かるたのルールを統一し、東京で第1回大会を開く
1955年
競技かるたの名人位決定戦が創設される。1957年にクイーン位も始まり、毎年1月に近江神宮(滋賀県大津市)で頂上戦が行われる
1965年
熊本県人吉市に伝わるうんすんカルタが県の重要無形民俗文化財に指定される
2007年末
競技かるた漫画『ちはやふる』の連載が始まり、競技人口の拡大につながる

伝来からおよそ450年。トランプとして入ってきた札は、禁令にもまれて花札へ、和歌と結びついて歌がるたへ、ことわざと結びついていろはかるたへ分かれた。日本の札遊びの大半は、この一枚のcartaの子孫にあたる。

三池住貞次と、かるたの里

現存する最古級の国産かるた「天正かるた」の札の裏には、「三池住貞次」という工人の銘がある。三池は筑後国、現在の福岡県大牟田市。ポルトガルのトランプと同じ4スート48枚の構成で、木版に手彩色を施して作られた。当時の文書には三池製の札が上物とされた記述が残り、のちに生産の中心は消費地の京都へ移っていく。大牟田市にはこの縁で「三池カルタ・歴史資料館」が置かれている。国内で唯一の、かるた専門の公立資料館になる。

天正かるた(元禄期の木版手彩色)
天正かるた(元禄期・木版手彩色)。トランプと同じ4スート構成が見て取れる。
図版: 作者不詳, Public domain, via Wikimedia Commons
禁令が残した「うんすんカルタ」

天正かるたは賭博の道具として広まり、幕府の禁令を繰り返し受けた。禁じられるたびに、名前と絵柄と枚数を変えた新型が現れる。48枚を75枚に増やした「うんすんカルタ」もその一つで、天和期(1681年頃)に記録が現れる。名前の「うん」「すん」はポルトガル語由来とされる。明治期にはほぼ姿を消したが、熊本県人吉市の鍛冶屋町にだけ遊び方ごと伝承が残り、1965年に県の重要無形民俗文化財に指定された。返事がないことを指す「うんともすんとも言わない」の語源をこのかるたに求める説もある(一説)。

うんすんカルタ
うんすんカルタ。5スート75枚まで拡張された。
写真: Outlookxp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

賭け事への禁令は、かるたが最初ではない。サイコロを使う盤双六には、持統天皇が689年に禁令を出している。日本の遊びの歴史は、禁令の歴史と重なって進む。

双六(すごろく)天皇が禁令を出してから1300年、サイコロひとつの国民遊戯ページを見る ▸
百人一首が正月の畳に座るまで

百人一首は、13世紀に歌人・藤原定家が京都の小倉山荘で百人の歌を一首ずつ撰んだものと伝わる。これが札遊びになるのは江戸時代。歌貝の伝統と舶来のかるたが合流し、上の句を読んで下の句の札を取る「歌がるた」の形が定まった。木版印刷での量産が始まると、宮中や武家の遊びだった和歌は庶民の正月の畳に降りてくる。明治37年(1904年)には新聞『萬朝報』の黒岩涙香がばらばらだった遊び方を統一し、競技としての第1回大会を開いた。現在の競技かるたはこのルールの直系にあたる。

歌がるたを遊ぶ女性たち(1900年頃)
歌がるたを遊ぶ女性たち(1900年頃)。読み手と取り手の配置が今と変わらない。
写真: George Grantham Bain Collection (Library of Congress), Public domain, via Wikimedia Commons
いろはかるたの東西

ことわざを一字ずつ集めたいろはかるたは、江戸後期に上方で生まれ、各地で中身を変えながら定着した。「い」の札は、江戸が「犬も歩けば棒に当たる」、京都が「一寸先は闇」。江戸版はこの札から「犬棒かるた」の通称を持つ。江戸・京都版は「いろは」47字に「京」の札(江戸版は「京の夢大坂の夢」)を足した48枚、大阪・尾張版は47枚と、枚数まで違う。同じ骨組みに土地ごとのことわざを載せ替えた結果で、郷土かるたが全国に無数にある下地もここにある。

花札屋、任天堂

1889年(明治22年)、山内房治郎が京都で花札の製造販売を始めた。屋号は任天堂。花札は天正かるたの流れをくむ賭博系かるたの末裔で、同店はやがてかるた・トランプ全般の国内大手になり、20世紀後半に玩具、そして家庭用ゲーム機へ事業を広げた。世界のゲーム企業の登記上の祖業は、いまもこの札作りにある。社名の由来は「運を天に任す」からとする説が知られる(一説)。

遊び方(散らし取り)

1

取り札を場に広げる。取り手は札を囲んで座る。

2

読み手が読み札を読み上げる。いろはかるたならことわざ、百人一首なら上の句。

3

取り手は対応する取り札を探して手で押さえる。早い者勝ち。違う札を押さえたら「お手つき」。

4

読み終えたとき、取った枚数が多い者が勝ち。

これが基本形。競技かるたは百人一首の取り札100枚のうち50枚だけを使い、自陣・敵陣に25枚ずつ並べ、試合前に15分の暗記時間を置く、まったく別物の対戦競技に発展している。

いまも買える

いろはかるたも百人一首も現行品が途切れたことはない。東京・神田神保町のかるた専門店「奥野かるた店」の江戸いろはかるたと、創業時からの製品を今も作り続ける任天堂の小倉百人一首が、それぞれ2千円前後で手に入る。

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奥野かるた店 江戸いろはかるた
奥野かるた店「江戸いろはかるた」(楽天)。犬棒かるたの現行版、英文解説付き。
任天堂謹製 小倉百人一首 金閣
任天堂謹製「小倉百人一首 金閣」(楽天)。花札屋として始まった任天堂の祖業直系の現行品。

メモ

  • 競技かるたは「畳の上の格闘技」と呼ばれる。名人位・クイーン位戦の会場である近江神宮の祭神は、百人一首の一番歌「秋の田の」を詠んだ天智天皇。
  • 百人一首の絵札だけで遊ぶ「坊主めくり」は、読み手がいらない遊び方として広まった。ルールの地域差・家庭差が大きい。
  • 郷土かるたは全国に無数にある。群馬県の「上毛かるた」は県民の大半が読み札を暗唱できるといわれる。
  • 花札は「花かるた」とも呼ばれた、かるた一族の賭博系の末裔。8×12か月の48枚構成に天正かるたの枚数が残る。
  • 大牟田市立三池カルタ・歴史資料館は、天正かるた復元品からいろはかるたまでを常設展示する国内唯一のかるた専門資料館。

購入先

かるた専門店の製品も任天堂謹製の百人一首も、楽天で現行販売がある。小倉百人一首「金閣」は2,180円(2026年7月時点)。読み手さえいれば道具はこれ一箱で足りる。

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