フェナキストスコープ|静止画が走り出す、1832年生まれの世界初アニメーション装置

フェナキストスコープ静止画が走り出す、1832年生まれの世界初アニメーション装置

走るネズミを描いた1833年のフェナキストスコープ円盤(アニメーション復元)

1832年ベルギー発光学玩具GIFのご先祖

フェナキストスコープは、縁にスリットを刻んだ回転円盤に連続画を描き、鏡に映してスリット越しにのぞくと絵が動いて見える装置。「動く絵」を作った世界初の装置とされ、名前はギリシャ語で「目を騙すもの」。ゾートロープより1年早い映像史の始発駅で、ループする短い動画——つまりGIFアニメのご先祖にあたる。

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楽天 参考価格 ¥990〜 税込・制作キット。店舗により変動

画: Thomas Mann Baynes(1833年・ロンドン)/アニメーション復元: Basile Morin, Public domain, via Wikimedia Commons(実物円盤「走るネズミ」の復元。このページ上でも回っている)

基本スペック

発祥
ベルギー(1832年末)
考案
ジョゼフ・プラトー(同時期に独立発明あり)
分類
光学玩具・アニメーション装置
しくみ
スリット付き回転円盤+鏡
名前の意味
ギリシャ語「目を騙すもの」
入手状態
制作キットが現行(教材)

特徴

  • 円盤の縁に連続画とスリットが交互に並ぶ。回して鏡に映し、スリット越しにのぞくと絵が動く
  • 「動く絵」を見せた世界初の装置とされる。映画もアニメもGIFも、系譜をさかのぼるとこの円盤に行き着く
  • 鏡が必要で、のぞけるのは1人だけ。この弱点を円筒化で解決したのが翌年のゾートロープ
  • 絵は円盤1周ぶん=十数コマで永遠にループする。現代のループ動画と同じ構造
  • 考案者のプラトーは物理学者。玩具として売れたが、出発点は残像の科学研究だった

誕生と歴史

1829年
ベルギーの物理学者プラトーが残像の研究に没頭。太陽を25秒間直視する実験まで行う
1832年末
プラトーがフェナキストスコープを考案。静止画を「動く絵」にした世界初の装置とされる
同じころ
ウィーンのシュタンプファーが同じ原理の「ストロボスコープ円盤」を独立に発明。ほぼ同時の二重発明だった
1833年
「ファンタスコープ」などの名で欧州各地で商品化され、大流行。ロンドンでは「走るネズミ」円盤(本ページのサムネイル)が売られた
1834年
イギリスのホーナーが円筒化した「デダリウム」(のちのゾートロープ)を発表。鏡なし・複数人で見られる形に進化する
1840年代
プラトーが視力を失う。それでも研究をやめず、口述と家族の目を借りてシャボン膜の研究を続ける
1877年
レイノーのプラキシノスコープが登場し、円盤から映写の時代へ。フェナキストスコープの原理は映画へ吸収されていく
2019年
プラトー生誕218年でGoogleのロゴがフェナキストスコープ風のアニメーションになり、「GIFのご先祖」として再び脚光を浴びる
「目を騙すもの」と名付けた

フェナキストスコープの名は、ギリシャ語のフェナキスティコス(騙す)とオプス(目)から。回る円盤は目に「動いている」と錯覚させるだけで、実際にあるのは十数枚の静止画にすぎない。発明者自身が「これは目を騙す装置だ」と正直に名乗らせた、科学者らしい命名になっている。売り場では発音しにくかったのか、「ファンタスコープ」「魔法の円盤」など呼びやすい別名が乱立した。

ほぼ同時に、二人が発明した

1832年の暮れから翌年にかけて、ブリュッセルのプラトーとウィーンのシュタンプファーが、互いを知らないまま同じ原理の円盤を作り上げた。世界が「動く絵」を発明する準備を終えていた、ということかもしれない。シュタンプファー版は「ストロボスコープ円盤」の名で1833年に発売され、ストロボという言葉の語源にもなった。

シュタンプファーのストロボ円盤第10番(アニメーション復元)

画: Simon von Stampfer(1833年), Public domain, via Wikimedia Commons(ストロボ円盤第10番の復元。歯車仕掛けの機械が動きつづける)

見えない目で「見る」を研究した人

プラトーは残像研究のため太陽を25秒直視する実験を行うほどの没頭ぶりで、1840年代に完全に視力を失った。失明は長らくこの実験のせいと語られてきたが、実際の病因には別の説もある。確かなのは、その後の人生だ。目が見えないまま、家族に観察を頼み口述で研究を続け、シャボン膜が作る形の法則「プラトーの法則」を打ち立てた。動く絵の発明者は、自分の見えない世界で、「見える」の科学を最後まで手放さなかった。

ジョゼフ・プラトーのダゲレオタイプ肖像(1843年)

写真: Joseph Pelizzaro, Public domain, via Wikimedia Commons(1843年のダゲレオタイプ。ちょうど視力を失っていく頃のプラトー)

しくみ・遊び方

1

円盤の縁に、少しずつ動きの違う連続画とスリットを交互に配置する。

2

絵の面を鏡に向けて、軸を持って円盤を回す。

3

円盤の裏からスリット越しに鏡をのぞく。スリットがシャッターの役目をして、鏡の中の絵が動き出す。

鏡越しにのぞく都合上、見られるのは1人だけ。「みんなで見たい」の声に応えたのが、翌年生まれの円筒式=ゾートロープだった。

いろいろな円盤

円盤は差し替え式のソフトで、踊る人・動く機械・走る動物と、19世紀の絵師たちが腕を競った。復元アニメーションで、当時の動きがそのまま見られる。

踊る男の円盤(1835年ごろ・アニメーション復元)
「踊る男」の円盤(1835年ごろ・手彩色リトグラフ)。クーパー・ヒューイット所蔵品の復元。
画: Simon Stampfer, Public domain, via Wikimedia Commons
走るネズミの円盤(1833年・アニメーション復元)
「走るネズミ」(1833年・ロンドン)。円盤の白い切れ込みがスリット。Commonsの秀逸な画像に選ばれた復元。
画: Thomas Mann Baynes/復元: Basile Morin, Public domain, via Wikimedia Commons

メモ

  • 十数コマの絵が永遠にループする構造は、GIFアニメと同じ。GIFのご先祖として近年再評価が進んでいる。
  • シュタンプファーの「ストロボスコープ円盤」は、点滅光で動きを止めて見せる「ストロボ」の語源になった。
  • プラトーの故郷ゲントには、映画の前史を集めた博物館があり、ベルギーの映画賞にも彼の名が冠されている。
  • 近年はレコードのピクチャー盤にフェナキストスコープ柄を刷り、ターンテーブルで回して動かす作品も作られている。
  • この図鑑の幻灯機・ゾートロープ・ステレオスコープと合わせると、映画前夜の光学玩具の系譜が一列につながる。

購入先

フェナキストスコープは図工教材の制作キットとして現役で、円盤に自分の絵を描いて「世界初のアニメ装置」を自作できる。ゾートロープのキットと並ぶ、自由研究の光学玩具の定番。1832年の発明を、鏡の前で自分の手で再現できる。

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