めんこ(面子)顔の土人形から始まった、勝てば相手の一枚を取れる江戸生まれの札遊び

めんこは、厚紙の札を地面に叩きつけ、風圧で相手の札を裏返して奪い合う遊び。名前は、顔を象った江戸の土製「面子」から来ている。素材は泥から鉛、鉛から紙へと姿を変え、絵柄には武者、軍人、力士、野球選手、アニメの主人公と、その時代の子どもの憧れがそのまま刷られてきた。勝てば相手の札が自分のものになる——だからいつの時代も、地面の上は真剣勝負だった。
写真: Nesnad, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(武者絵の丸めんこと角めんこ)
基本スペック
特徴
- 札を地面に叩きつけた風圧と衝撃で、相手の札を裏返す。裏返した札はもらえる
- 形は丸めんこと角めんこの二系統。地方によって「べったん」「パッチン」など呼び名が変わる
- 絵柄は時代の人気者がそのまま刷られる。武者絵から野球選手、アニメまで、めんこは子ども文化の年表になっている
- 縁を踏み固める、ロウを塗るなど、札を強くする改造の文化があった
- いまも駄菓子屋玩具として現行。骨董市場では古い絵柄のめんこがコレクション対象になっている
誕生と歴史
(1831〜45)
「面子」の名は、文字どおり「面(顔)」から来ている。江戸で量産された粘土製の面打・泥面子は、ひょっとこや福の神など顔を象った親指ほどの素焼きで、はじめは穴一遊びの投げ駒だった。これが独立した遊び道具になり、「小さな面」=めんこと呼ばれるようになったとされる。素材が鉛や紙に変わって顔の造形が消えた後も、名前だけが今日まで残った。

写真: Countakeshi, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(江戸時代の面打=めんこの前身・17〜19世紀。顔を象った素焼きが名前の由来。東京国立博物館)
明治のめんこは鋳物の鉛が主役だった。よく飛び、よく裏返る鉛めんこは明治10年代に急速に広まったが、1900年に大阪で鉛中毒の事件が起き、流れが変わる。子どもが口に入れる遊び道具の鉛は危険だという認識が広まり、鉛めんこはおよそ20年で市場から姿を消した。入れ替わりに主役になったのが、国産の紙と印刷機械で量産できる紙めんこ。玩具の素材が公害事件で交代した、早い時期の記録になっている。
めんこの絵柄を並べると、子どもの憧れの変遷がそのまま読める。明治〜昭和初期は武者絵と軍人。戦時中は戦車や軍艦。戦後は力士と時代劇スター、そしてプロ野球の選手たちが主役になった。赤バット・青バットの時代には野球めんこが全盛を極め、昭和30〜40年代には漫画・アニメのキャラクターが取って代わる。下の1枚は1949年、大映スターズの強打者・小鶴誠のめんこ。翌1950年、小鶴は1シーズン161打点という今も破られない日本記録を打ち立てることになる。

図: 作者不詳(1949年), Public domain, via Wikimedia Commons(大映・小鶴誠の丸めんこ。戦後の野球めんこ全盛期の1枚)
遊び方(起こし)
相手の札が地面に置かれる。自分のめんこを手に、狙いを定める。
地面に思い切り叩きつける。風圧と衝撃で相手の札が裏返れば勝ち。
裏返した札は自分のものになる。ほかに、円の外へ弾き出して奪う「つっけん」など地域ルールが無数にある。
札の縁を踏み固める、ロウを塗って重くする——強いめんこを作る改造もまた、この遊びの半分だった。
いまも買える
めんこは絶版ではない。駄菓子屋玩具の問屋筋が今も丸めんこ・角めんこを刷り続けており、武者絵の札が数百円で手に入る。地面に叩きつけて、風圧で裏返す——ルールを知る大人が付き合えば、遊びは30秒で今の子に伝わる。
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メモ
- 呼び名は地方色が濃い。関西では「べったん」、地域によって「パッチン」「パッタ」などと呼ばれた。
- 勝てば相手の札を取れるルールは熱中と紙一重で、学校や親から遊びを制限された時代の記録も多い。
- 米国の「POG」(1990年代・ミルクキャップ)は、めんこ型の弾き合い遊びが海外で大流行した例。ハワイの牛乳瓶の蓋から始まった。
- 江戸東京博物館や玉川大学教育博物館などが、泥面子から昭和の紙めんこまでを収蔵している。
- 野球めんこはベースボールカードの日本側の祖先として、海外のカードコレクターからも収集されている。
- この図鑑のこま・けん玉と並ぶ「路地の三種の神器」枠。どれも勝負と改造の文化を持つ。
購入先
丸めんこ・角めんこの現行品は、駄菓子屋玩具を扱う店や通販で手に入る。数枚入りで数百円から。強いめんこを育てる楽しみまで含めて、昭和の路地の遊びを丸ごと再現できる。
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